雲竜渓谷には2004年、2018年に歩いており、今回で3度目の入渓を機会に、地球温暖化の観点から氷の状況が今と昔でどのような変化があるのか興味深い。世界の平均気温がこの20年間で約1℃上昇したとのこと。
雲竜渓谷は1月中旬~2月中旬にかけて絶景が楽しめる。日光市街地から約8kmの稲荷川沿いの山間にあり、女峰山の麓に位置している。
奥深い山域でありながら、その割には容易に訪れることが可能となっている。何といっても自然が造る氷柱・氷瀑に魅了されることにある。
そこで、以下の通り撮りためた写真を参考に、氷の状態を比較することにした。
但し、氷の出来具合は地球温暖化による影響だけが関係するとは言い切れないし、写真比較にしても筆者の主観もあるだろうと思われ、あらかじめご理解を。
◆氷柱・氷瀑の出来具合概況(2004/2018/2026年 → 3年分の写真を比較検討):
①友知らず:いずれの年も重厚で見応えありで勝敗つかず。氷の付き具合、規模に大きな変化はないように感じられた。
②燕岩:2004年-太い氷柱が7本、槍のように鋭い氷柱がたくさん。2018年-太い氷柱が見ごたえあり。2026年-太い氷柱が3本、鋭い氷柱はまばら。
見応え順位-1位2004年 2位2018年 3位2026年
③雲竜瀑:
③-1 中央部の太さ:2004が1位、2026が2位、2018が3位 ※2004年:さらに中央部から上部にかけて、先端が鋭利な氷柱が大きく広がっている。
③-2 裾野の広がり:3年分の比較に大きな変化は見られない。
③‐3 氷結部の色づき:青白い輝きの出具合は2026年がベスト。
全体的な見栄えは2004年がベストと感じた。
白銀の世界は、すばらしい絶景を堪能できるが、反面、寒さは厳しく、道迷いや暴風雪、雪崩、氷柱崩落などの危険も伴うので、行動は慎重のうえにも慎重に。

いつもなら滝尾神社(たきのお-じんじゃ)辺りから道路や林などに残雪が見られるが、ほとんどなし。
登山口には6時30分ごろ着いたが、今回はめずらしく登山口のある最奥の駐車場まで行けた。
この辺は登山口まで駐車場らしきものはないが、道路両脇に点々と数台止められるスペースがあるので、そこを利用することになる。

橋のように見えるが、ここは「稲荷川第10上流砂防堰堤」で、上部は道路状になっていて歩くことができる。
渡り終えると、突き当たりを左折し、稲荷川左岸の高台に設けられているハイキングコースを歩く。(一部崩壊のところがあるので注意して歩こう)

圧倒的で巨大なコンクリート壁、日本でも有数の規模を誇る「日向砂防堰堤」。
過去に2度の嵩上げをしたとのこと。それだけこの川は激流で大量の土砂が溜まるのだろう。

砂防堰堤手前にある急登。
距離は短いが朝から息が上がる。

日向砂防堰堤の上からは南東方向が開けており、右手に筑波山、左手に加波山が望める。また、その手前には宇都宮市郊外の古賀志山の山並みが望める。

また、砂防堰堤から奥に控える女峰山系の山並みなどが望めるが、この地点からは山頂部は見えない。写真右端の白い山の後ろに隠れていて見えない。赤茶色の地層も見える。
砂防堰堤内には工事車両向けの道路が作られており、1か所だけ渡渉がある。約1mほどの水路だが、渡渉個所はいくつもあり、落ちないよう慎重に足を運ぶ。

砂防堰堤の左斜面にある道路を登っていく。
この辺は積雪が目立ってきた。

日向砂防堰堤から登りつめると林道に出合う。すぐ近くの道路沿いに日向雨量観測所がある。
この林道は登山口からこの地点まで一般の方の立ち入りが禁止になっており、ここが規制の終点で、この先、雲竜渓谷への道は規制対象外となっている。

林道は、アスファルト舗装で除雪されており、道路中央部はほぼ雪が解けている。
チェーンスパイクを履いているので、できるだけ道の両端を歩くようにした。
この先、「多数回、熊が目撃されています」の黄色い看板がある。
さすがに標高が高く気温も低いので、この時期にはまだ活動はしていないと思ったが、昨今の熊騒動もあることだし、用心することに越したことはないだろう。

林道はやや上り基調だが、身体に負担を期すほどの高度差はなく、約15分で洞門岩に到着する。
写真左側にある一段高い道は、雲竜渓谷入口まで続いており、距離約1.5km林間コースで、帰りのルートでは3分の2が下り基調なので、利用する方もいるようだ。(所要時間は約40~50分)
「洞門岩」には大きな岩が2つ並んでいて、この先河原に下りていく。
この先、迷いやすいルートなので注意したい。以下に留意点をまとめてみた。
洞門岩⇆雲竜渓谷入口 道迷い対策

①河原に下りて行く。

②河原に下りると、左前方に鋼製パイプで組んだ新たな砂防堰堤が見える。
この堰堤の左端付近から容易にくぐりぬけることができる。
先ほどの鋼製パイプ型砂防堰堤をくぐり抜けた先が一番迷うところ。
③まず、左手は大きな岩が覆いかぶさるような感じで先まで続いているが、こちらはダメ。(赤矢印方向は✕)
④右手側の小高い岩と疎林をくり抜いて溝状になっているところが正解(青矢印方向へ〇)

⑤すぐに左に曲がり、岩混じりの疎林内に入って行く
⑥岩混じりの疎林内を行く
⑦この時期、残雪もある。
再び河原に出る。
⑧河原の対岸(右岸)に向かう。
⑨右岸にある大きな岩の脇を通り、登っていく。
⑩林道のような広い道に出る。
ここを左折して少し進むと雲竜渓谷入口の広場に出る。
(右下[河原方向]には行かないこと)

雲竜渓谷入口の少し手前のミニ氷柱群(稲荷川左岸)。

雲竜渓谷入口に到着。
ここでチェーンスパイクからアイゼンに履き替え、ヘルメットを装着する。
いよいよ今日最大の氷の世界は果たして?
それにしても雪の量は少なめ。
お馴染みの階段から河原に出る。

ところで、「渡渉」は雲竜渓谷歩きでは避けて通れないが、ここまでは日向砂防堰堤内で1ケ所、その後は洞門岩から数ケ所あったが、いずれも飛び越える川幅は1m前後で、川幅が広いところは中間に石が置いてあって、さほど難しくはなかった。
この先の「友知らず」、「ツバメ岩」辺りは渡渉が多めになる。
川に落ちると凍傷のリスクもあり、慎重に対応したい。

ここは「友知らず」と呼ばれる。
重厚で、青白く輝く氷柱・氷壁群は見事に輝く。

光の射し具合で氷の色が変化している。

続いて「ツバメ岩」。
ここは岩が棚状になっており、ステージを感じさせる。上から落ちる水が凍り付いて、鋭い氷柱を何本も連続して作られる。

しかし、以前に訪れた22年前と8年前の様子を比べると、明らかに氷柱の出来具合が悪い。大きな柱が何本もできる。槍のように鋭い氷柱も数が少なく見栄えが悪い。これも気候変動の影響を少なからず受けているのだろうか。

この色、クリーム色の氷は初めてみる。
ツバメ岩の上段から凍り付いていて、霧のような感じで降ってくる。
温泉物質でも混じっているのかな?

いよいよ雲竜瀑へ。
奥に白く見えているのが雲竜瀑と呼ばれる。
その手前に茶色く濁っている氷柱は、奥の雲竜瀑からの水が落ち込んでいる。
雲竜瀑へは正面からダイレクトに行くことはできない。
そのため、写真下部の濁った氷柱のすぐ前から右手のアイスバーン状の急坂を登ることから始まる。
”緊張度No.1”
行動の前にアイゼンの緩みや装備をチェックしよう。
高巻きし、岩壁の向こう側に下りる格好となり、こちら側からは見えない。

スタート時の道はアイスバーンの急坂を登る。道と言っても平地の安定した道ではない。雪が多めのときは、踏み跡が階段状に造られ、やや安心感があるが、今日はアイスバーンが丸出しだ。
アイゼンを地面に直角に踏み込むように慎重に登る。
右手下方は急斜面で雪がついており、木々が生えているわけではないので、滑れば止めようがなく数十メートル下のツバメ岩前の河原に落ちることになる。
写真上部の2つの岩付近まで高巻きする。スタート時点から約30m高度を上げるだろう。
その後、左側に降下して行く。
雲竜瀑が見えてきたが、この先がまたまた怖い・・・。

最後の難関だ。
”緊張度No.2”
アイスバーンの急降下に緊張する。
ここもスタート時の急坂と同じで、補助になるものは一切ない。

しかし、以前は両脇に広がる3段の氷柱のステージになっていたが、3段目は一部に氷柱が見られるものの、2.5段ほどになっている。

根元がしっかりと大きく広がり、今年も立派な雲竜瀑を披露してくれた。
雲竜瀑は健在だった。圧倒的な威容を誇っている。