甲子道路(国道289号)がいよいよ甲子トンネルの完成により平成20年9月21日に全線開通する。加えて那須温泉から甲子温泉に通じている高原道路「那須甲子有料道路」が9月1日から無料化された。これまで930円の料金だったが、30年の料金徴収期間で計画とは裏腹に工事費を回収できずに無料化に至った。
今後、那須、甲子、会津エリアの観光客の流れも変化するだろう。
国道289号は甲子峠を境に険しい山岳のため、車の通行は寸断されていた。
下郷町から甲子峠までは、途中から林道並の道ではあるが通じていた。しかし、甲子温泉から甲子峠まではいわゆる「山道あるいは登山道」であり、「車が走れない国道」としても全国的にめずらしい国道に位置づけられている。
この「登山国道」もまもなく甲子トンネル開通によって、国道から県道あるいは村道に移管されるであろうし、今回「最後の国道」を歩いてみることにする。
「安心坂トンネル」を抜けると、まもなく開通する甲子トンネル(甲子温泉側)が見える。
【甲子大橋 写真】
現在、通行止めの甲子大橋手前を左折すると甲子温泉に下って行く。
登山口となる甲子温泉は、阿武隈川沿いに旅館大黒屋が1軒営業している。
駐車場に着いたが、強い雨でしばらく車内で待機。別なグループは出発していった。
旅館の一角に車を置かせてもらい、旅館の玄関前を通り抜け下っていく。
折からの雨で、阿武隈川にかかる堰堤から滝となりその豪快さと轟音に圧倒される。
国道289号の標識がコンクリート橋の手前にある。
この橋を渡ると本格的な登山道となる。
阿武隈川源流域はいくつもの沢が集まり、山頂部まで右に左に豪快な流れを感じさせる轟音が聞こえていた。
さらに登っていくと、またもや国道の標識。
なんともこんなところにも標識とはびっくりである。
10分ほど歩くと温泉神社がある。
山行の無事を祈って拝礼。
道はこの神社の裏手から通じている。
雨はほとんどあがって一安心。
ジグザグの道が続く。直登なら相当な急傾斜。
ブナの木が多くなる。
所々、ショートカットの道があるが、かえって息を乱すような傾斜なので素直に九十九折の道を進む。
1時間30分程で急登は終わる。道が平坦になったところで、「猿ヶ鼻」というところに出る。ちょうど休憩に良い。
雨はとっくに止んでいるが蒸し暑く汗が吹き出る。
この真下あたりは甲子トンネルが通っていると思われる。
なだらかに登って行く。
クロベの巨木が目立つようになる。
分岐に差し掛かる。
右手は甲子峠に通じており、国道289号が続く。頂上へは左に行く。ここで国道とはお別れである。
道はえぐれて溝状になっており、ほとんど岩盤の上を歩く。もろくこぼれやすい岩ではあるが、濡れていてもブレーキがきく岩だ。
傾斜がきつくなり、ほぼ一直線に道は続いているようだ。
両側には補助ロープが延々とつながっている。
頂上間近の一番の難所。
下山には気をつけたいところ。
頂上へは約2時間40分で到着。
真新しい頂上標柱と方位盤が設置されている。
眺望を期待したがガスでほとんど見えない。
時おり頂上付近は陽射しがあるのだが...。
雷の心配は当分なさそうなのでじっくり待つことにする。
風も吹いてきたので、期待できそうな気配。
まず下郷方面が開けてきた。
しかし、旭岳(赤崩山)方向、大白森山方向もほとんど顔を出さない。
やっと大白森山方向が開けてきた。甲子峠もはっきりとわかる。
三本槍岳方向を望む。
空は青空が一部に現れてはガスが舞い上がるの繰り返し。
やっと旭岳(赤崩山)が現れるが、これ以上は望めないと判断して、下山にかかる。
登山口近くの「白水滝」に寄ってみる。
その手前の温泉神社裏手からもう一つ「衣紋滝」があるが、途中まで行ったが沢沿いにアップダウンのためリタイヤする。
大黒屋の入浴場。
洗い場なしのまさに秘湯。自然の岩盤に深い浴槽が特徴。
旅館本館から地下道を通り抜けていくが、難点は帰りの長い登り階段に疲れた体がこたえる。