鳥海山は秋田・山形県境に位置し、山頂部は山形県に属する。
海岸線から延びた独立峰で、その秀麗さと山がもたらす恵みから、この地方ではシンボル的存在で衣食住すべてにわたって鳥海山とともに成り立っている感じがする。
また、その山容から出羽富士、秋田富士、庄内富士などと呼ばれている。
鉾立登山口の駐車場に午前1時過ぎに到着。
大きな駐車場が整備され、ビジターセンターや2軒の小屋がある。
車で仮眠後、5時前に起床。寝たような感覚はないが体調は良好の様子。
しかし、辺りは一面にガス。風もあるがそれほど寒くなく、ガスが切れるような様子がうかがえる。
やがて、鳥海山の雄姿が朝焼けの雲とともに浮かび上がってきた。
5時40分出発となる。
標高1150mの登山口をスタート。中腹からのスタートとはいえ、標準で登り5時間・往復16kmもの長丁場で決して楽なコースではないことがうかがえる。
それだけに山行の醍醐味や得るべきものが多いはず。
コンクリートの階段を登っていく。
10分ほど歩くと展望台から深く切れ落ちた奈曽渓谷が望める。
この渓谷に落ちる「白糸の滝」は、雨が少ないのか涸れていた。
前方から朝日が射して、その方向には目指す鳥海山の山肌がかすかに望める。
登山道は石畳でかなり先の「七五三掛(しめかけ)」あたりまで整備されている。
しかし、この石畳、歩くには足腰にかなりの負担があり、帰りのバテた体にこたえるだろう。
一面の笹原に入り、陽射しを浴びて光っている。振り返ると庄内平野が薄く霞んで望めるようになる。
その奥に日本海も見えるはずであるが確認はできなかった。
やがて岩石をちりばめた広大な庭園の感じがするところに入ってきた。
賽の河原かと思ったが、この一段上にあるとのこと。
賽の河原は、全国の山などにいくつもあるが、親より先立った子供がケルンのように石を積み上げる伝説で三途の川を指すようだが、どこも同じような雰囲気をもっている。
賽の河原から道は左方向(東)に向きを変え、さらに一段高く登りつめる。
今、登ってきた賽の河原付近を望む。
御浜小屋に着く。
ここで行程の約半分で、登山口から4km。
(すでに小屋は休業したとのこと。まだ犬がつながれていたので、小屋じまいの最中か)
笹原と草を中心に低木帯となっている。遠くから見ると草原のような感じがして気持ちの良いところだ。この辺で標高約1700m。
御浜小屋の前を通り抜けると、稜線となりすぐに右手下方に「鳥海湖」が現れる。
かなり水が涸れてきている。
鳥海湖と同時にはじめて鳥海山の全景が現れる。
雄大な山並に感動を覚える。
鳥海湖を振り返る。
湖の先に鍋を伏せたような山は「鍋森」と呼ばれ溶岩ドームだそうで、火山活動は鳥海山頂付近だけでなく庄内平野や日本海までも含まれるとのこと。その遠く奥には、「笙ヶ岳」が望める。
扇子森(せんすもり)を経て御田ヶ原にやってくる。名前のとおり高台の平原の感じがする。
鳥海山へはまだまだ遠い。(ためいき)
(本当の苦行はこれからというのは、初めての自分にはまだ理解していない。)
石畳の八丁坂を下りて、その先登り返す。雄大な景観で気持ちの良いところだ。
(往路・復路でどちらも上りにも下りにもなるが、この坂、帰りには特にきつい)
「七五三掛(しめかけ)」に到着。前方に外輪山の絶壁が見えてくる。
「七五三掛」から100mほど急登すると途中に分岐がある。
右手へは「外輪山コース」、左手へは「千蛇谷コース」で、どちらも大きな時間の差は無いようであるが、どちらかというと行きは「千蛇谷コース」が選ばれるようなので、こちらに向かう。
いきなり、ハシゴがあり、谷の下部まで急下降していくので、滑落に注意。
雪渓はだいぶヤセて大したことはないが、6~7月はこの千蛇谷をほとんど一面に覆って、雪渓上を直登できるようである。
幅20mほどの雪渓を横切り、向かい側の登山道に出る。
左側に頂上付近の岩峰が見えているが、「新山」はその奥のほうにあるらしい。
写真やや左下からやや右寄りに写真上部中央付近に巻いて登っていく。
この辺からさらなる苦行が続く。岩の間をジグザグに登っていくが、息が続かない。
外輪山方向から落石があった。大きな音とともに岩が転がっていくのが見えた。
こちら側でないので、安心して見ていたが他人事ではなくこちら側も要注意。
あと少しのふんばりで、御室小屋や大物忌神社に着く。
途中には落石が積み重なった地点を横断するところもある。
やっと着きました。
4時間30分の道のりでした。(決して楽な行程ではなかったが)